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幸運な夜

執筆者の写真: LatoLato

昨日も歌いに行ってきた。相方不在のため単身。たった一人で深夜に歌いに行くという奇行も慣れたものだ。友達はみな「よく怖くないよねー平気なの?大丈夫なの?」と言うけどいたって平気だし大丈夫だ。相方がせっせこ袋詰めしてくれたきびだんご(CD)を携えて夜の街に繰り出す。到着すると、驚きもしない最近見慣れたゴーストタウンだ。ちぇっ。コロナのせいで静かなもんだ。ベンチで誰かがポテトチップスを咀嚼する音まで聞こえてきやがる。本当に静か。私はいつもより音量下げ目で歌いだす。するとまさかの、神様からのラッキーチャンス。人だ。人が出てきた。きびだんごは思いのほかよく売れ、たくさんの人が聴いて行ってくれた。この感じ、久しぶりだったな。きびだんごは無くなって身軽での帰宅かと思いきや、ビールやジュースの差し入れどっさり。ズシンと重たいほどの荷物と幸せな気分で帰宅した。コロナ始まって以来だと思う、こんなにお客さんに恵まれた夜は。すごくすごく嬉しかった。どれくらい嬉しかったかというと、帰りの運転中に涙ぐむほどだ。嬉しくて幸せで、生きてるって感じが強烈にして、高揚して感動した。とても眠れない。

私は夜空に向かって「今日来てくれたみんな本当に本当に、ありがとうございました!!!」と言って深く一礼する。

ゴールデンウイークで連戦していると、さすがに同じ曲を歌うモチベーションが下がってくることがある。っていうか、何年も毎週末同じ曲を歌う、何百回も歌っているのに飽きずに歌えるのはお客さんの力が成すところが大きい。一晩に2時間以上も歌唱するには気力も体力もかなり消耗する。それすらお客さんの喜んでくれる反応により相殺されてしまう。こんな夜は疲れないのだ。寒くないし疲れない。連夜の長時間ライブによる疲れがそろそろ出てきてもおかしくないのだが、それが一切ない。怖いくらいノーダメージで、もはや無敵だ。

お客さんから声を褒めてもらったり曲を褒めてもらったりすることに対しての「慣れ」もない。長いこと歌い手をやっているけど、いつだって心の底から嬉しくて感動する。お客さんはCDを買ってくれてそのうえ「ありがとな」なんて言ってくれたりする。数億倍のありがとうの気持ちが毎度湧き上がる。感謝しかない。

コロナ渦で、音楽や芸術だって人間には必要な大事なことだ、とかたまにテレビやラジオで聞く。ほんとかな。私は私なので他人の心情はわからないから「そうだ絶対にそうだ」とは思わない。だってそもそもライブ鑑賞したりする人ばっかじゃないでしょ。

ただひとつ、明確に言えることは、私はライブで凄まじいパワーと幸せと金をもらっている。お客さんから。ゲスなことを言うが事実だ。だから私にとっては音楽は救いの神だ。

私はひたすらに、酔いどれのオッサン達に感謝し、彼らを崇める。

また飲みに出たときは寄りなよ。最高の音楽を、安全な場所で生きたままの歌を、全身全霊で捧げましょう。

あ、今夜も歌いに行っちゃうよ♪

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